ごあいさつ
|
第24回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
会長 間島雄一
(三重大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科)
|
この度、第24回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会を担当させていただくとになりました。本学会会員の皆様には、心より感謝申し上げます。
免疫 ・アレルギーの分野では活発な基礎的研究がなされていますが、その臨床応用となると両者間の距離は必ずしも近いとはいえない場合が多々あります。しかし、この分野での基礎的研究は臨床に不可欠であり、また基礎的研究は臨床応用を目的とするからこそ、その存在意義があるわけです。そこで、今回の本学会のテーマは「基礎と臨床の結合」といたしました。そのため出来る限り臨床に直結する基礎的研究の特別講演やシンポジウムを計画いたしました。
2006年3月2日(木曜日)の教育講演は、まず近年注目が著しい自己由来物質である血液凝固系因子がリモデリングや気道分泌に関与するという「血液凝固系因子による肺・気道系組織の病態形成とその制御」を三重大学分子病態学の鈴木宏治教授にお話し願います。血液凝固系因子の中心因子であるトロンビンは、凝固促進作用ばかりでなく凝固抑制作用、細胞増殖作用、アポトーシス、血管内皮や上皮の透過性亢進、粘液糖タンパクの産生亢進など多彩な作用を有しています。ここではトロンビンの気道組織への障害作用と凝固制御系による障害作用の阻止を中心に最新の話題を提供していただく予定です。細胞外マトリックスは鼻茸の形成、気道のリモデリング、癌の浸潤などに重要ですが、その機能を発揮するためには細胞外マトリックス、細胞外マトリックス分解酵素(matrix metalloproteinase: MMP)、その分解酵素の三者のバランスが重要です。そこで慶応義塾大学病理学の岡田保典教授に「細胞外マトリックス分解酵素と疾患」と題して主にMMPにつき判りやすくお話し願います。またMMP近縁遺伝子ファミリーで最近注目を集めているADAM (a disintegrin and metalloproteinase) にも言及していただき、組織の破壊とリモデリングに関わるこれらMMP/ADAM分子についてお話いただく予定です。スポンサードレクチャーはPeter J. Barnes教授による「New treatments for allergic diseases」です。数年前に小生は喘息の薬物療法について、彼が行った講演を日本アレルギー学会で聞き、いたく感激して即座に彼が編した「New drugs for asthma, allergy and COPD」を購入しました。今回の彼の講演は、この本に近い内容で、小生が是非実現したかったレクチャーです。呼吸器に上気道と下気道の隔ては無いというのが私の持論でありますので、上気道疾患の治療にも多いに役立つ内容と思います。
3月3日(金曜日)の特別講演は三重大学腫瘍 ・免疫内科学の珠玖 洋教授による「固形癌の免疫療法:トランスレーショナルリサーチの実践と課題」です。癌に対する腫瘍拒絶活性はCD8陽性キラーT細胞であり、この細胞が認識する抗原は、標的腫瘍細胞が産生するペプチドが標的細胞の発現するMHC 分子に結合したものです。講演では腫瘍に対するT細胞免疫応答に関する研究の最近の進歩と動向につきお話いただくとともに、珠玖教授が実践されている、がんワクチン研究を例にとって医学研究に不可欠なトランスレーショナルリサーチ(探索的臨床研究)の問題点とその基盤整備についても言及していただく予定です。ランチョンセミナーは国立病院機構三重病院臨床研究部の藤澤隆夫先生による「好酸球研究のup date」です。最近、好酸球の位置づけの見直しがすすんでおり、気道のリモデリングへの関わり、自然免疫における新たな役割など興味深い知見が集積されつつあります。藤澤先生は本邦における好酸球研究の第一人者であり、好酸球についての最新の知見を聞くことができると思います。
3月4日(土曜日)の特別講演は岐阜薬科大学薬理学の永井博弌教授による「アレルギー性炎症とリモデリング」です。永井教授のグループはアレルギー性炎症による下気道のリモデリング動物モデルを世界に先駆けて作成され、これを用いてリモデリングについての興味深い発表を多数されています。リモデリングは慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎そして鼻茸にもみられることから、その臨床的意義とリモデリングの機序の解明は我々の領域においても重要です。またリモデリングを防止できればリモデリングによる障害を回避することも可能となります。永井先生は特にアレルギー性炎症におけるリモデリングの機序の解明とその防止を精力的に研究されていますので、我々にとっても多いに参考になるお話を聞けるものと期待しています。ランチョンセミナーは東京女子医科大学第一内科の近藤光子先生による「気道の慢性炎症とマクロライド」です。近藤先生は下気道におけるマクロライド研究を精力的に続けられてきました。先生には下気道の慢性炎症におけるマクロライドの作用機序を臨床および基礎的研究から明らかにしていただきます。またウイルス性鼻炎の原因となるライノウイルス感染に及ぼすマクロライドの影響もお話しいただけるものと思います。
シンポジウムは氷見、清水両教授に司会をお願いして「アラキドン酸代謝物の新しい展開と臨床応用」です。アラキドン酸代謝は比較的古くから知られていますが、近年新しい知見が次々と報告され、別の角度から再認識されつつあります。種々の炎症で重要な役割を果たすアラキドン酸代謝物の新しい展開に耳を傾けていただきたいと思います。シンポジストは新進気鋭の耳鼻咽喉科医で以下の如くです。
兵佐和子先生(大阪医科大学):慢性副鼻腔炎におけるプロスタノイドの関与
岡野光博先生(岡山大学):アレルギー性鼻炎におけるPGD2/PGE2代謝とその臨床的意義
石戸谷淳一先生(横浜市立大学・市民総合医療センター):慢性副鼻腔炎におけるアラキドン酸カスケード関連遺伝子の発現解析
服部玲子先生(三重大学):鼻副鼻腔炎におけるプロスタグランディンE2の制御作用
白崎英明先生(札幌医科大学):アレルギー性鼻炎とシスティニルロイコトリエン、トロンボキサン、PAF
他に国際交流基金受賞者(盛川宏先生)の帰国報告、 公開講座「アレルギー疾患の発症予防と早期治療」など盛り沢山のプログラムを用意いたしますので、多くの方々の御参加をお待ちいたします。
会場の鳥羽市は伊勢神宮や志摩半島で有名な伊勢志摩国立公園のど真ん中にあり、学会会場は鳥羽湾が一望できる岬の先端に位置しています。大いに学会や風光を楽しんでいただきたいと思います。
|