ご挨拶

福井大学医学部感覚運動医学講座
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
会長 藤枝 重治


 第28 回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会を担当させていただくにあたり、本学会員の皆様に心より感謝申し上げます。福井でこの学会を開催いたしますのは初めですが、福井大学(旧福井医科大学)としては、恩師、齋藤等教授が、あの懐かしい新宿セブンシティーホテルで第13 回の学会を担当させていただきました。私は、耳鼻咽喉科医になった1 年目の終わる3 月からこの学会に参加させていただき、数多くのことを勉強させていただきました。故石川哮教授、奥田稔教授、今野昭義教授から鋭い質問を受けますと大変緊張しましたが、質問を受けないと研究内容がおもしろくなかったのかなと気分が落ち込みました。今日の自分があるのは、この学会のお陰だと思っております。

 さて世間では、民主党が行いました「事業仕分け」が注目を浴び、スーパーコンピューター予算を代表例に研究費の削減を予測させる危機に脅えています。本学会は、アレルギー、粘膜免疫、癌免疫など様々な研究が発表され、耳鼻咽喉科の中では比較的基礎的研究レベルの高い学会と言われてきました。しかし残念ながら億という単位の研究プロジェクトにこの学会会員がこれまで参加できていないのも現実です。それに輪をかけ、小泉改革後の大学病院運営の変更、新研修医制度などから、最近は非常事態宣言を出さなければいけない程ひどい状態になってしまいました。そこで今回はまずは、どうにかしてしばらく前の活気を取り戻したい。とにかく学会員の皆様の気持ちを盛り上げたい。できればビックプロジェクトにつながる研究のアイデアを得ていただきたいと思っております。そのような理由からも原則口演を1 会場とし、多くの先生1演題に集中していただき、質問が受けられるような学会運営にいたしました。

 そのため学会内容では、シンポジウムを敢えて組まず、自薦他薦の素晴らしい演題には15 分の講演時間として特別口演枠を4題設定しました。また口演は時間の都合上40題とし、特別枠4題(応募8題)と口演40題(応募59題)はプログラム委員6名の抄録に対する採点で公平に行いました。これほどの厳密さは、今回、初の試みです。そのため素晴らしい内容でありながらポスター演題になった演題もあり、お詫び申し上げます。その代わり、口演に選ばれた演者の方は自信を持っていただきたいと思います。今回のメインテーマは「基礎研究から臨床治療への橋渡し」であります。繰り返しますが基礎的な研究成果から治療へのヒントをぜひとも得ていただきたいと思います。

 初日の教育講演は、東京医科歯科大(元秋田大学)・樗木俊聡(おおてきとしあき)教授と兵庫医科大学・中西憲司教授にお願いいたしました。樗木教授は、粘膜関連リンパ組織中の樹状細胞に注目し、樹状細胞におけるIL-15 の重要性を証明されたのを皮切りに、IgA 産生における樹状細胞からのTNF/iNOS の関与、本年6月にはIFN に造血幹細胞の増減を制御する機能があることを見出し、Nature およびNature 関連誌に2001 年からほぼ毎年掲載されておられます。2007 年に第10 回日本免疫学会賞を受賞され、現在日本で最も注目されている新進気鋭の教授であります。中西教授は、IL-18、IL-33 を中心とした全く新しいアレルギー性疾患の発症機序の解明と治療法の開発をなされ、免疫・アレルギー分野の大御所でおられます。2009 年には好塩基球がアレルギー炎症の司令塔であることを証明され、Nature 関連誌に掲載されておられます。このお二人のお話を聞いてしっかり勉強したいと思います。

 そしてスポンサードレクチャーは、グラクソ・スミスクライン社のご賛同により、2008 年北京オリンピック 男子400 mリレー銅メダリスト朝原宣治選手と奥様で1992 年バルセロナオリンピック シンクロナイズドスイミング ソロ・デュエット銅メダリスト奥野史子選手をお招きします。大きなプレッシャーを背負いながらの夫婦一丸となっての努力でメダルを手にされた朝原選手、「めちゃかっこええやん、お父さん」と支えられた史子さんに鼻呼吸の重要性をアスリートからの体験を踏まえて楽しくお話していただき、我々も元気になりたいと思っています。出席される会員のご伴侶・ご子息の参加も歓迎です。

 スポンサードセミナーは、東京大学医学研究所・清野宏教授に、頭部顔面領域粘膜免疫機構という新しい概念に関して講演をお願いしました。ヒトに関しては、どのようなものなのか新しい視野を養いたいと思います。

 モーニングセミナーは、京都大学・新実彰男准教授に慢性咳嗽についてお願いしました。ランチョンセミナーは、理化学研究所・玉利真由美研究リーダーと筑波大学・檜澤伸之教授にゲノム解析と解析からのテーラーメイド治療について、太田総合病院・千葉伸太郎先生には花粉症と睡眠障害について、東京医科歯科大学・横関博雄教授にはスギ花粉症皮膚炎についてご講演をお願いしました。すべてアレルギーに関する最も興味深い分野を選びました。

 2 月の福井は、雪が降る薄暗い天気ですが、最近の温暖化で降雪も少なくなりました。学会期間中はまず市内には雪がないと思います(希望的観測を含みますが)。学会会場はJR福井駅に併設しています。小松空港へのバスは会場前から出ています。永平寺や東尋坊へも貸し切りタクシーが学会会場前に待機しています(この方が安く、時間設定のセット料金があるとのことです)。昔のちんちん電車でも行けます。永平寺は、山深いので雪があると思います。雪の永平寺、素敵です。一度見てみる価値があります。東尋坊では綺麗な雪の華(波しぶきのことです)が舞っています。越前ガニを代表とする大変おいしい日本海の魚、淡麗辛口の福井地酒が、皆様をお待ちしています。3日目の学会はお昼に終わるように設定しました。研究も余裕からです。どうぞたっぷり福井を楽しんでいただきたいと思います。



 
Last Update :2009.7.30
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